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「形になるまで、使って気づくこと ― 試作と整理のあいだ」

  • AZZWELL
  • 2020年12月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:6月14日

何か新しい型を作るときはいきなり本番の革で仕立てることはほとんどなく、まずは手元に余っている革で何度か試作を重ねていきます。

財布でも鞄でも、小さな小物でもその流れはほとんど変わりません。


最初の1回目は、とにかくパターン通りに形にすることを目的にしています。

シルエットやサイズ感、構造を確認するためだけの試作です。

ここでは革の質感や色はあまり気にせず、あくまで「図面が立体になるとどうなるか」を見るための一歩目。革が足りなければ継ぎ接ぎにすることもありますし、芯材を入れないこともあります。


2回目では、1回目で気づいた厚みや形状のバランス、ディテールの変更を行います。

たとえばポケットを増やしたり、逆に要らないと思ったものを減らしたり。

マチの幅や縫い代の取り方、開閉のしやすさなど、使い勝手に関わる部分を中心に、細かい調整を入れながらパターンを修正していきます。


3回目になると、ある程度「完成型に近い」ものとして制作します。

ここで初めて実際に自分で使ってみるというステップに入ります。

自分で日常的に使ってみることで、思わぬ不便があったり、逆に想像以上に使いやすい部分に気づけたりします。

仕切りが邪魔だったり、カードの出し入れがしにくかったり、手に持ったときの馴染みが良くなかったり──実際に使って初めて分かることは、作業机の上ではどうしても見落としがちです。

何個も財布,鞄,などの試作品

この「使ってみる」段階を経たのちに、ようやく不要なパーツを省いたり、ディテールをさらに詰めたりしながら最終型を製作していきます。

そこまでやってようやく「この形で出せる」と判断することができます。


先日はバックルの整理をしていましたが、今回はこの試作で作ってきた財布や鞄たちを、いよいよ整理しようと思い立ちました。けれども、いざ箱や棚から出してみるとその量の多さに圧倒されてしまい……

正直なところ、モチベーションが一気に下がってしまいました。


これまで何型も作ってきたことは自覚していたのですが、実際にこうして目の前に並べてみると、ずいぶんといろんな形を考えてきたのだなとあらためて実感します。

長財布、二つ折り、コンパクト、L字ファスナー、ラウンド型、マネークリップ……

そのときどきで求められるものや自分が作りたいと思ったものを、試行錯誤しながら形にしてきた記録がそこにあります。

財布,鞄,などの試作品

とりあえず、今回は長財布だけをまとめて整理することにして、他の財布、小物、鞄などは「なんとか年内に……」ということで、また追い追い手をつけていこうかと思っています。

思ってはいます。

たぶん。


整理をするたびに思い出される制作時の感覚や、使いながら感じた細かい不満点。

それらの積み重ねが、今のものづくりに確実につながっているのだと信じて、今日もまた試作を続けています。



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