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オーダーメイド__鹿革で仕立てた判子ケース

  • AZZWELL
  • 2024年8月21日
  • 読了時間: 3分

更新日:10月15日

今回ご紹介するのは厚手の鹿革を使ってお作りした巾着タイプのオーダーメイド鹿革判子ケース。

「大きめの判子を入れたい」というご要望でした。

元になったのはご依頼主が長年使ってこられた鹿革の古いケース。

その雰囲気を損なわず現代的な使いやすさも加えて仕立て直すことを目指しました。

元の判子ケース

今回、革の種類についての指定は特にありませんでしたが使用目的や構造から考えて私は鹿革をご提案しました。

鹿革は非常にしなやかで手になじみやすく、それでいて耐久性に優れた素材です。

薄くても丈夫で、重くならず長く使うほど味わいが出てきます。

とくに巾着構造との相性がよく、紐の締まり具合やくたっとしたフォルムが柔らかく仕上がるのが特徴です。

今回使用したのは厚みのある上質な鹿革。

色は焦茶と黒の2色をご用意しました。

どちらも落ち着いた雰囲気で使い込むごとに自然な艶が増していきます。

鹿革判子ケース

ご依頼主と相談して表面(吟面)が外に出る「吟面使い」で仕立てました。

この仕上げでは、内側の床面(裏側)の処理が重要になります。

鹿革の床面はそのままだと毛羽立ちやすいため、今回はしっかりと裏処理を施し滑らかな触り心地になるよう整えています。

全体のサイズ感は、旧ケースをベースにしつつも大きめの判子に対応できるよう微調整を加えました。

また、底面には軽くカーブをつけて、角を落とした柔らかな印象に。

四角さを残しながらも丸みのあるフォルムにすることで手に持ったときの馴染みがぐっと増します。

鹿革判子ケースの玉淵

そして見た目にはほとんど目立たない部分ですが、今回のケースでは革と革の間にもう一枚、厚めの芯材として鹿革を挟んでいます。

これによりケース全体の形状がしっかりと保たれ長く使っても型崩れしにくい仕立てになります。


この「見えない一枚」があるかないかで、完成時の印象や使い心地が大きく変わってきます。

裁断も本体を傷つけないようキワギリギリで行う必要があり見えないところほど神経を使う工程です。

さらに、今回お預かりした元ケースにあったディテールを参考に口元にはさりげない半円模様のアクセントを入れました。

控えめながらも手仕事らしい温もりが感じられるアクセントです。

鹿革判子ケースの口部分

今回の判子ケースは、飾るものではなく、日常的に使う道具としての機能と美しさを目指しました。

鹿革の巾着構造は開閉のしやすさ、持ち運びのしやすさ、そして経年による味の出かたすべてにおいて、長く使うための工夫が詰まっています。

昔のケースのように、10年、20年と時を重ねながら使い続けていただけたら――

革もご依頼主の手元で少しずつ育っていくことと思います。


鹿革に触れるのが初めてという方にも今回のような巾着ケースはとてもおすすめです。

手に取ったときの軽さ、しなやかさ、そして独特の柔らかい質感は他の革にはない魅力があります。


鹿革に馴染みのない方におすすめ 初めての鹿革におすすめのミニ巾着 鹿革の軽さと質感を体感してみてください。


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