「形になるまで、使って気づくこと ― 試作と整理のあいだ」
- AZZWELL
 - 2020年12月6日
 - 読了時間: 2分
 
更新日:9月4日
形を探る最初の一歩
何か新しい型を作るとき、いきなり本番の革で仕立てることはほとんどありません。
まずは手元に余っている革を使い、試作を重ねながら形を探っていきます。
財布でも鞄でも、小さな小物でも、その流れは変わりません。
「 試作」というのは、完成までの道のりに欠かせない大切なプロセスです。
1回目の試作は形にするだけ
最初の試作は、図面通りに立体化してみることが目的です。
この段階では革の色や質感は気にせず、シルエットやサイズ感、構造を確認します。
革が足りなければ継ぎ接ぎにしたり、芯材を入れなかったり。
完成度よりも「図面が立体になるとどう見えるか」を知ることに重きを置きます。
2回目でディテールを整える
次の段階では、厚みや形のバランス、ディテールを見直します。ポケットの数を増減したり、マチ幅や縫い代を修正したり。
開閉のしやすさ、収納のしやすさなど「使い勝手」に関わる部分を中心に調整を行います。
ここで大きく印象が変わることも少なくありません。
3回目は実際に使ってみる
三度目の試作になると、ようやく完成に近い姿となります。
この段階で初めて自分自身が日常で使い、実際の使い心地を試します。
仕切りが邪魔に感じたり、カードの出し入れがスムーズでなかったり。
逆に思いがけず便利な部分に気づくこともあります。
机の上では気づけなかった不便さや快適さが、実際の使用を通して浮かび上がります。
試作の積み重ねが最終形へ
こうして「使ってみる」段階を経て、不要な要素を省き、必要な部分を磨き上げます。
何度も試作を繰り返すことで、ようやく「この形で世に出せる」と判断できます。
先日はバックルの整理をしていましたが、今回はこの試作で作った財布や鞄を整理しようと思い立ちました。箱や棚から取り出してみると、その量に圧倒され、正直モチベーションが下がってしまったほどです。
長財布、二つ折り、コンパクト、L字ファスナー、ラウンド型、マネークリップ……これまでの試作は、自分の思考や試行錯誤の記録そのもの。
整理を進めるたびに、制作の感覚や改善点を思い出します。
その積み重ねが、いまのものづくりにつながっていると感じながら、今日もまた試作を続けています。



