sample bag / 特殊加工した革鞄
- 2021年2月23日
- 読了時間: 3分
更新日:4月15日
緊急事態宣言下の、静かな休日。
外出もできず、時間もあるので久しぶりに昔の写真を整理してみました。
こういう作業は面倒くさいようでいて、始めてみると意外と楽しいものです。20年近く前に作ったものの写真もたくさん出てきて、当時の空気感まで蘇ってくるような感覚がありました。
当時の経験は、今の製作にも確実に繋がっています。
革鞄加工の幅が広がった時代
当時はアパレルブランドのOEMとして、鞄や小物、アクセサリーの製作に多く携わっていました。
今ほど業界全体が厳しい状況ではなく、ブランド側にも余裕があり、コストよりも「面白いことをやる」という空気が強かった時代です。
「こういうことをやってみたい」「面白ければ何でもいい」
そんな言葉とともに、新しいアイデアや挑戦的な仕様を形にする機会が多く、非常に濃い経験を積ませてもらいました。
丘染め、柿渋、藍染といった日本的な染色から、下地の風合い調整、細かな色指定、さらには革一枚にインクジェットプリントを施す加工や、レーザーによる刻印など、加工の幅も一気に広がっていきました。
中でも特に印象に残っているのが、ダメージ加工全盛期の頃です。
錆加工、サンダーやヤスリで削るダメージ処理、製品洗い、ペンキ塗布、バーナーで炙る──
今振り返ると「そこまでやるか」と思うような工程ばかりですが、当時はそれが当たり前で、新品の製品をあえて“壊す・汚す”ことが仕事でした。
こうした極端な加工を経た経験があるからこそ、現在は素材そのものの質感や経年変化を活かす製作へと、自然に重心が移っています。
同じ革でも、加工によって表情を作るのか、素材そのもので見せるのか。その違いは、実際の製品を見るとより明確に感じられるはずです。
過酷で忘れられない特殊加工
数ある中でも、今でも忘れられないのが――ある特殊な液体を使った“ビンテージ風染め加工”。
まずタンニン鞣しの革を独特な編み込み(これがまた説明しづらい構造)に仕立て、それを数日かけて液体に漬け込みます。
この液体、仕上がりの色が濃度や漬け時間によってまったく変わってしまい、しかも編み込んだ構造が漬け込むと次第にゆるみ、形が崩れてしまう。
そのたびに再調整。乾燥ではさらに熱によって縮みや硬化も起きて、最終的には1割ほどがロスになったほど。
仕上がりは、まるで何十年も使い込まれた革のような、風格ある“古さ”。
ただし加工は屋外。真冬。独特の匂い。手や服につくと落ちない。寒い。くさい。とにかく過酷でした(笑)。
今のものづくりに繋がる姿勢
今、自分のブランドでつくっているものはそういう時代の反動もあってか、余計な装飾や奇をてらった加工はあまりしていません。
普遍的で、できる限り長く使えるもの。
派手さよりも、素材そのものの良さや仕立ての精度を大事にするようになったのは、あの頃の“やりすぎの経験”があるからかもしれません。
※写真は当時制作した、特殊加工を施したサンプルバッグです。
今見ると、「やり切ってたなあ」と笑ってしまうけど、あの熱量と混沌があって今がある。
そんな気がします。




