初めてのシルバー925バックルと、つながっていく時間
- AZZWELL
- 2020年11月29日
- 読了時間: 2分
更新日:9月5日
初めてのバックルとの再会
先日、作業場の整理をしていたときに棚の奥からひとつのバックルが出てきました。
細かいキズやくすみをまといながらも形を保っていたそのパーツは、20年以上前に自分が初めて作ったシルバー925のバックル。
思いがけない再会でした。
当時は彫金の経験も乏しく、道具も限られていました。
ただ「自分でこんなバックルを作りたい」という気持ちだけで、銀板を糸鋸で切り抜き、ヤスリで削り、曲げて…とにかく形にすることに夢中でした。
何本も糸鋸の刃を折りながら、試行錯誤の末にようやく完成させた記憶がよみがえります。

仲間とのつながりに支えられて
幸運だったのは、当時周囲に彫金をしている友人や先輩がいたことでした。
ロウ付けの方法を教えてもらったり、工具を貸してもらったり。
ひとりでは決して成し得なかった挑戦も、仲間の助けがあったからこそ形にできました。
20年以上経った今も、当時出会った仲間とは交流が続いています。
仕事の情報交換をしたり、ただ飲みに行ったり。
学校も住まいも違ったのに、なぜか縁が切れずに続いている不思議なつながりです。
あの頃の試みが技術や作品だけでなく、人との関係を築いてくれたのだと改めて感じます。
原点をベースに新たな形へ
今回見つけたバックルは思い出として残すことも考えましたが、せっかくならと現代的にアレンジして製品化することにしました。
新しく仕立てたのが「TSC-F」という品番の横長タイプのシルバー925バックルです。
シンプルでありながら横に広がるデザインは、ベルトに付けたときに確かな存在感を放ちます。
初めての挑戦で作った楕円の曲線をベースにしつつ、今の技術と感覚を加えて再構築しました。
原点を踏まえながらも、20年分の積み重ねが加わった一点です。


シルバー925バックルが持つ魅力
シルバー925は古くから装飾品やアクセサリーに用いられてきた素材で、その上品な輝きと使い込むほどに増す風合いが特徴です。
バックルとして使用することで、単なる金具以上の存在感を放ち、ベルト全体の印象を引き締めます。
今回のTSC-Fは、そうしたシルバー925の特性を活かしながら、シンプルで飽きのこないデザインに仕上げました。
たまたまの整理作業がきっかけで、初心を思い出し仲間とのつながりを再認識し、そして新しい製品へとつながっていく──
そういうことがあるから手を動かし続けることはやっぱり大切だなと、しみじみ感じた一日でした。



