革包丁の手入れと道具の意味
- AZZWELL
- 2021年1月7日
- 読了時間: 3分
更新日:9月4日
年始の習慣、革包丁の手入れ
毎年、仕事始めにまず行うのが道具手入れ。
中でも欠かせないのが刃物の研ぎです。
酷使した道具に感謝を込めて刃を整える時間は、自分にとって気持ちを新たにする大切な儀式でもあります。
革を扱う仕事において、包丁は単なる道具ではなく“相棒”のような存在です。
切れ味が落ちれば作業の質が下がり作業効率にも影響する。
逆に、しっかり研がれた刃物はそれだけで仕事のリズムを整えてくれます。
信義の革包丁
これまでいくつかの革包丁を試してきましたが、自分のようにある程度の数をこなす立場では、やはり「信義」というメーカーの包丁がしっくりきました。
ガシガシ使えて、研げばしっかり戻ってくる。
この安心感は、日々の作業で何よりもありがたいものでした。
残念ながら現在はもう手に入らないのですが、あと2~3本あれば、この先しばらくはやっていけるだろうと思っています。
こうした「自分にとってちょうど良い道具」と出会えることは、職人にとっては幸運なことです。

特注の一丁に込められた鍛冶屋の手仕事
信義とは別に、もう一本忘れられない革包丁があります。
山形の鍛冶屋さんに特注で作っていただいたもので、価格はそれなりに張りましたが切れ味・安定感ともに申し分ない出来でした。
メーカー品にはない、手作業で鍛えられた温もりがあり、道具としての美しさも感じさせてくれる一丁。
今でも大切に使っていますし、“人の手が宿る道具”は、自分が作るものにも確実に影響を与えてくれていると感じています。」

道具や材料が消えていく時代に
ここ数年、長年使ってきた道具や材料が少しずつ姿を消しているのを実感します。
包丁メーカーが廃業したり、接着剤メーカーが生産を終了したりと、当たり前にあったものが手に入らなくなる。
その一方で「今あるものを大切にする」という意識も強くなりました。
革包丁の手入れを怠らず、刃を研ぎ澄ませることは、ただの作業効率のためではなく、道具と長く付き合うための姿勢そのもの。
時代が変わり、道具や素材が変化していくからこそ“今手元にある道具”を丁寧に扱う意味が増しているのだと思います。
道具と向き合うことが仕事を整える
革包丁の手入れは単なるメンテナンスではなく「整える時間」でもあります。
切れ味の良い刃で革をスッと裁つ感覚は、ものづくりの原点そのもの。
道具を大事にし、長く付き合うことが結果的に作品の精度や完成度にもつながっていきます。
これからも、手元の包丁と向き合いながら、日々の制作に取り組んでいきたいと思います。



