「ブッテーロを使ったオーダーメイド時計ベルト|上品さを追求した一点物」
- AZZWELL
- 2022年6月4日
- 読了時間: 3分
更新日:10月20日
上品な印象を叶えるオーダーメイド時計ベルト
オーダーメイド時計ベルトのご依頼をいただきました。
お客様のご要望は「茶系で、上品に仕上げてほしい」というもの。
時計ベルトは時計本体の印象を大きく左右するため、革の選定から厚み、構造まで一つ一つ検討を重ねました。
2種類の構造から選んだ「一枚革タイプ」
上品さと一口に言っても、革の質感や厚み、構造の違いによって印象は大きく変わります。
そこで今回は、仕上がりのイメージを具体的につかんでいただけるよう、
2パターンの雛形を事前にご提案しました。
ご提案したのは以下の2タイプ:
- 一枚革のシンプルな構造 
- 革芯を入れて貼り合わせた、スタンダードな構造 
その結果選ばれたのは一枚革タイプでした。
使用したのはイタリア・ワルピエ社のブッテーロ。
しっとりとした艶とコシを備え、経年変化も豊かな革です。
落ち着いたチョコ色が、アンティーク調の時計本体に自然に溶け込みます。

厚みの調整で時計全体のバランスを整える
一見些細に思えるかもしれませんが、ベルトの厚みは時計全体の印象に直結します。
最初は2.0mmで雛形を製作しましたが、最終的には2.3mmで本製作。
さらに、裏面を滑らかにするための裏処理を施すことで、最終的な厚みは実質2.2mmほどに。
このわずかな調整によって、時計本体との厚みのバランスが取れ、上品さの中にも存在感がある仕上がりになりました。


サルカンとステッチが生む上質感
ベルトを通す「サルカン(遊環)」も重要なパーツです。
当初は0.8mmの革で試作しましたが、仕上がりがやや軽すぎてアンティーク調の時計ケースとちぐはぐな印象に。
そこで1.0mmの革で再製作し、ネン(装飾と強度を兼ねた線)を入れることで、シンプルながらも締まった印象に仕上げました。
革は使ううちに多少伸びるため、ほんの少しだけキツめに設定。
この「ややキツめ」が、長く使ううちにちょうどよくなるポイントです。

ベルト本体も同様に、革の端を丸く処理しネンを入れて仕上げました。
時計本体との接続はとても悩みましたが、アンティーク調の時計の雰囲気を壊さないよう、目立たないシンプルなステッチを選びました。
使用した糸はフランス・フィル・オ・シノワの麻糸。
化繊糸に比べ強度は落ちますが、麻糸特有のマットな表情と上品な風合いは今回の時計ベルトにはぴったりでした。

使いながら育つブッテーロの魅力
サイズホールも、いくつか試作を繰り返しました。
使い始めは少しキツめでも、革が馴染んでくる経年変化を見越して小さめに設定。
そうすることで、使い込むほどにちょうどよくなりブッテーロ特有の張りとツヤが手元で育っていきます。
既製品では得られない一点物の価値
完成したベルトを実際に時計本体に装着してみたところ、期待以上にしっくり。
素材、厚み、接続方法、細部の処理...どの要素も無理なく調和し、時計を引き立てる名脇役のような一本になったと思います。
既製品では得られない、使い手の要望に応じた一点ものの時計ベルト。
ご依頼いただき、ありがとうございました。







