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革で仕立てる─ミネルバボックスの「経年変化球」

  • AZZWELL
  • 2024年3月25日
  • 読了時間: 2分

更新日:6月5日

久しぶりに硬式野球のボールを製作しました。

今回選んだ素材は、イタリア・バダラッシ社の「ミネルバボックス」。

革好きには言わずと知れた植物タンニン鞣しの高級レザーです。

球のカタチでありながら、ボールとしての役割はもう終えた。

そのかわりに、手にした人の生活の中でまったく違う表情を見せてくれるものになりました。


写真左がMLB公式ボール、右が今回製作した「生成り」のミネルバボックス製ボール。

革の違いは一目瞭然ですが、「同じ型」を用いながらまったく異なる「球」に仕上がる。

この面白さは、革という素材の奥深さそのものです。

硬式野球ボール

野球のボールというのは、実は極めて構造が複雑です。

2枚の8の字型の革を、螺旋状に縫い合わせる独特の構造。

加えて、球体を保ちながら美しく仕上げるには革の厚み・コシ・柔軟さなどあらゆるバランスが問われます。


今回使用した生成りの「ミネルバボックス」は、顔料を一切使わずナチュラルな仕上げが特徴のレザー。

製作当初は明るく素朴なベージュトーン。

しかし、ここからが本番です。

使う人の手の油、空気中の湿気、光……

環境に応じてゆっくりと色味が深まり、飴色の艶がにじみ出てきます。

いわばこのボールは、「経年変化する変化球」。


握るたびに質感が変わり、飾るだけでも表情が出る。

道具であり、インテリアでもあり、素材の実験場のようでもある。

そんな一球です。


この生成りのボールに、明確な「使い道」はありません。

ただ、そのまま飾るのも良し。

手元に置いて時々握って革の変化を楽しむも良し。

本棚の上、デスクの隅、ヴィンテージグローブと一緒にディスプレイ…… そんな使い方も粋です。

素材の良さと形の面白さ。

両方が合わさって言葉では説明しきれない魅力が生まれます。


野球ボールという「完成されたもの」を、あえて別素材でつくりなおすこと。

このボールは、いわば「遊び心の詰まった一球」

けれど、素材は本物、技術も妥協なしです。







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