板材から生まれるシルバーバックル製作
- AZZWELL
- 2020年10月21日
- 読了時間: 3分
更新日:9月4日
シルバーバックルに込めるもの
azzwellで製作しているシルバー製品のなかでも、シルバーバックルはとりわけ手数の多いアイテムです。
板材から形を切り出し、ピンを含めた複数のパーツを構成し、最後に全体をひとつの調和にまとめ上げる。
完成までの過程は長く、そして悩ましくもあります。
今回は、そんなバックルづくりの背景と、制作の中で感じたことを少しお話ししてみたいと思います。

板材を切り出すところから
最初にするのは、外枠の形を板材に描き、糸ノコで切り出す工程です。
外周を切り、さらに内側をくり抜いて「輪」の状態にする。
ここからが金属の面白さが現れる瞬間です。
くり抜いた部分を削り込んで厚みやエッジを整え、全体をわずかに曲げて立体感を与える。
この「ほんの少し曲げる」という操作だけで、平坦だった板が表情を変え、命を宿すように見えるのです。

バランスを支えるブリッジの存在
バックルの中心となるのが「ブリッジ(橋)」と呼ばれる部分です。
ここが弱ければ全体が歪み、逆に強すぎると存在感ばかりが前に出てしまう。
実際の作業では、ブリッジの幅と高さを決めて仮止めし、何度も全体のバランスを見直します。
「あと数ミリ低ければよかった」「角度がわずかに浮いている」──
そんな細かな調整の積み重ねが続きます。
違和感を感じたら、ためらわず削り直す。
その繰り返しの中で、ようやく納得のいく形が見えてきます。

最も悩ましい「ピン」づくり
最後に待ち構えているのが、ベルト穴に差し込むための「ピン」
見た目の印象と機能性、その両方を満たす必要があるため、私にとって毎回もっとも時間がかかる工程です。
細い銀線を叩き、曲げ、削って形にしていく。
太さや長さ、角度のわずかな違いが、全体のバランスを大きく左右します。
単体で見ると良さそうでも、本体に組み込むとどこか違和感がある。そんなことは日常茶飯事です。
結果的に、ひとつの完成品にたどり着くまでに何本もの「ボツ作品」が生まれます。
けれどもそれらは無駄ではなく、小さな試行錯誤の積み重ねの証しでもあるのです。
完成と不均一の魅力
板材を切り出し、ブリッジを組み、ピンを整え、ロウ付けして全体をひとつにまとめる。
そして最後に磨き上げて、ようやくひとつのバックルが完成します。
もちろん、すべてが完全に均一になるわけではありません。
わずかな歪みや手の痕跡が残ることもあるけれども、それこそが手仕事の魅力であり、一点物の価値だと思っています。
「今回こそはもっとスムーズにいけるだろう」と思っても、実際には悩んだりやり直したりの連続です。

納得するまで
毎回「今回こそはもっとスマートに作れるかな」と思うのですが、実際には悩んだり、手戻りしたりしながら進むのが常です。
ただ、それでもやめられないのはやはり完成したときの感触が格別だから。
自分の手で納得するまで作る。
そんな思いで、これからもバックル製作を続けていこうと思います。
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