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チョコレートカラーのサドルレザーベルトの製作工程|革の表情を活かす手仕事

更新日:10月24日

サドルレザーの魅力は、厚みのある素材が生み出す力強さと、使うほどに深まる艶にあります。

その表情を最大限に引き出すためには、素材を理解した上での裁断・磨き・縫製の積み重ねが欠かせません。

ここでは、AZZWELLの工房で行われているサドルレザーベルト製作工程の一部をご紹介します。


チョコレートカラーのサドルレザーベルトの製作工程

今回のオーダーベルト サドルレザーで使用しているのは、特注で染色工場に依頼し独自に染め上げた思い入れのあるチョコレートカラー

光の角度によって赤みが立ったり、透明感が出たり、逆に深く沈んだような陰影を見せたりと、非常に奥行きのある表情を持った色味です。


サドルレザーのチョコレートカラー

ナチュラルレザーの風合いを活かした裁断

革はタンニンで鞣されたいわゆる“ナチュラルレザー”で、表面に顔料や樹脂を施すような加工を避け、素材本来の風合いを活かしています。


裁断の際にはなるべく傷を避けて選定していますが、天然素材である以上、どうしてもごく小さな傷や血筋が現れることがありますがそれらはあえて加工で隠すことなく、そのままの姿で仕上げています。

むしろ、そうした自然な表情こそがこの素材の魅力であり、一点一点に異なる個性と深みを与えてくれるものと考えてのことです。

サドルレザーの古傷や血筋

垂直裁断とコバ仕上げで整えるライン

裁断においては、まず垂直面をしっかり出すことから始まめます。

ベルトのように長尺のものをまっすぐ、しかも刃が革に対して垂直に入るよう切るのは、実はとても難しい作業です。


手で持った時に当たり前の自然な印象を与えるためには、この「まっすぐさ」がとても重要。

些細なズレでも、完成品では目につくものになります。

次の工程となる「コバ(革の断面)」の仕上がりを大きく左右するため、繊細に気を配って裁断しています。

革の繊維の流れや厚みの微妙な違いを見極め、どこを使うか、どう切るかによって、最終的な仕上がりが最初の裁断で決まると言っても過言ではありません。

サドルレザーを垂直に裁断
ベルトの帯を垂直に裁断して上から見た

垂直に裁断したら、次はコバを整えます。

まず断面の角を軽く落とし、豆カンナで微調整をしながら何度も何度も磨きと整形を繰り返します。

少しずつR(曲面)をつけていき、幅に対してやわらかな印象のエッジになるように。

ここはもう、なんというか... 終わりのない工程です。

ベルトのコバ磨きの工程
ベルトのコバ磨きの工程最終段階

コバの美しさは、完成品の雰囲気を大きく左右します。

ほんのわずかなラインの粗さも、手に取った瞬間に伝わるため、最も神経を使う作業のひとつです。

ちなみに、もう一つ帯にとっての顔であるサルカン(革のループ)についても今回は剣先とのバランスを見て幅を1m/m太くしたり、厚みをあれこれと試行錯誤しましたが長くなるので省略します。


金属パーツとの調和を考えたバックルとピン

大まかな革のパートが終わり次は顔となる金属パートへ

シルバー925バックルは合わせやすく末長く使用できるシンプルな角形状の型番TSC-73


今回ぜひ触れておきたいのは、“ピン”の方です。

あまり目立たない存在ですが、使い心地を左右する重要なパーツで密かにこだわりの詰まった部分です。

今回は、装着時に帯となる革への負担を極力減らすため細身のピンを採用しました。

このピンは既製品ではなく、バックルとの相性を見ながら一本ずつ製作します。

初めは角棒なのでエッジが立っていますが、少しづつ全体にRをつけていきます。

わずかな太さの違いで動きや収まりが変わってしまうため、叩いては削って、バックルに合わせ、微調整を重ねながら少しずつ理想の形に近づけていきます。

シルバ-925バックルを上から見た
バックルのピンの制作初期
バックルのピンをバックルに合わせて

精度と耐久性、そして使用時の快適さを兼ね備えるためには、わずかな角度の調整も重要です。

この作業は終わりのない作業の一つなので1日では仕上げません。

同一種の革帯に当てて見てどうなるか、帯からほんの少し覗く”ピンの顔”を意識して調整を繰り返します。

バックルのピンの制作最終
バックルとピンを合わせた状態

穴あけと手縫いで完成するオーダーベルト

いよいよ終盤、ベルト製作の中で最も緊張する工程のひとつが「穴あけ」です。

特にこのベルトでは、細く整形したピンにぴったりと合うように製作した極細極小サイズの小判で穴を空けていきます。

その形状が小さく繊細であるほど、ほんのわずかなズレが目立ち、仕上がりの美しさを損なってしまいますので一発勝負、やり直しはききません。

緊張で指先が固まるような、そんな工程です。

ですが、この工程があるからこそ全体の造形が締まり、使う人に量産品とは「何か違う」と気づいたり、感じてもらえるのではないかと...

ベルトの小判穴

仕上げの工程として、バックルをベルト本体に取り付けて完成となります。

この取り付けも、一本ずつ手縫いで行います。

ミシンでは出せない、しっかりと締まる高い強度、糸同士が重ならないよう手前から奥に連続するように重ねて縫うことで手縫いならではの素朴で力強い簡潔な表情が、このベルトの雰囲気を決定づけます。

最後のこのひと手間が、全体をぐっと引き締めてくれる―― そんな思いで、糸を通しています。


フルオーダーで生まれる一点物のサドルレザーベルト

回のお客様もありがたいことに二度目のご購入です。

しかも今回は、帯まで含めたフルオーダー。

オンラインでのご購入ですが、今回の品はチョコレートカラーのサドルレザーを使い、一点の品物として自分の手で最後まで仕上げることができ、個人的にもとても思い入れのあるものとなりました。

末永くご愛用いただけたら嬉しいです。


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完成したベルトを真上から見た

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