sample bag / 一枚革の贅沢──マディソンバッグ
- AZZWELL
- 2021年3月2日
- 読了時間: 2分
更新日:6月25日
今から10年以上前。まだ量産の仕事と並行して、自分用の試作やサンプルを作っていた頃。
これはそんな時期に遊び心と贅沢を詰め込んで作った「一枚革のマディソンバッグ」です。

モチーフにしたのは、学生時代の部活帰りに背負っていたような、クラシックなマジソンバッグ。
かつて一世を風靡したそのシルエットを自分なりの解釈でレザーアイテムに落とし込んでみました。
素材は、当時よく使っていたイタリアの高級皮革「ミネルバボックス」。
なんと丸々一枚、贅沢に使っています。
ミネルバは表情が豊かで、張りすぎず柔らかすぎず、自分の製作スタイルにはしっくり来る革です。
今思えば私物とは思えないほど思い切った使い方をしています...

ファスナーは頭合わせの仕様にし、ぐるりと一周。
どの位置からでも開閉が可能です。
全開にすると、まるで座布団のように平らな一枚革になり、その姿もまた、このバッグのユニークさの一つです。
構造はいたってシンプル。
軽量化を意識し、裏地は付けずに革の裏面処理のみ。
内装は携帯が入る程度のフラシポケットを一つだけ設けています。
ファスナー周りには、共革で裏打ちした補強を施し、さらにWステッチで縫い上げることで耐久性を確保。
底にはシルバー製のホックピラミッを打ち込み、底鋲のような役割も持たせています。

サイズ感としてはかなり大きめ。
メロンが3〜4個並んで入るくらいの容量があります。
とはいえ、レザー製のわりには軽く日常使いにも耐えうる仕上がりにしてあります。
この頃、自分用の鞄には本当にミネルバボックスばかり使っていました。
量産品ではどうしてもコストとの兼ね合いで妥協が必要になる場面が多く、だからこそ私物は反動のように「振り切ったもの」ばかり作っていたのかもしれません。
結果としてこのバッグも、「作って満足」してしまった一品。
現在は、アトリエの奥で他のサンプルたちとともに静かに眠っています。
けれど、こうしてふと振り返ってみると、当時の試行錯誤や、素材と真正面から向き合っていた自分の姿が浮かび上がってきて、やっぱりいい時間だったなと思います。

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