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手彫り唐草模様のシルバーコンチョの製作

  • AZZWELL
  • 11月28日
  • 読了時間: 4分

更新日:12月1日

オーダー品としてお作りした、手彫り唐草入りシルバー925コンチョ。

今回はその制作過程を少しだけご紹介します。手作業でつくるからこそ生まれる表情や、革とシルバーが育っていく楽しみも合わせて感じていただければ嬉しいです。


一点物、手彫り唐草シルバーコンチョ

今回のご依頼は「フラワー型のシルバーコンチョに、手彫りの唐草模様を入れてほしい」というもの。

メインはMサイズですが、制作環境が整っているタイミングだったため、S・M・Lの3サイズをまとめて制作しました。


サイズが変われば、模様の入り方、彫りの深さ、陰影の出方まですべて調整が必要です。

「Sは密度を少し抑えないと詰まりすぎるな」「Lは逆に余白が出やすいから彫り幅を変えよう」など、サイズごとの最適解を探りながら仕立てていきます。

同じ“唐草”であっても、量産にはない微妙な差が生まれるのは手彫りならでは。

その違いが、そのまま持ち主の「特別さ」につながっていきます。


完成した手彫り唐草シルバーコンチョを斜め左から見て

鏡面仕上げから始まる、コンチョ制作の土台

まず取りかかるのは、コンチョ全体の鏡面仕上げ。

シルバーは磨き具合で表情が大きく変わり、彫りを入れた際の陰影の出方にも直結します。

鏡面が整ったら、次は外周に入れる装飾模様。これは、ただ飾りとして刻むわけではなく、コンチョ全体の輪郭の印象を左右する大事な工程です。

強すぎても主張しすぎてしまうし、弱すぎると唐草が浮いてしまう。バランスを慎重に見ながら、一本一本タガネを走らせていきます。

この外周装飾も当然すべて手作業なので、同じに見えるようで実は少しずつ表情が違います。


鏡面の三分の一だけに刻む、表情豊かな唐草模様

外周が整ったら、いよいよ中央の鏡面部分へ唐草を彫り込んでいきます。

今回のオーダーでは「鏡面も楽しみたい」というご要望をいただいたため、全面ではなく鏡面の約三分の一にだけ唐草を刻む構成にしました。

全面彫りよりもシンプルですが、だからこそ鏡面の“光”と彫りの“影”のコントラストが映えます。

彫りの部分は使うほどに黒く深まっていき、鏡面は柔らかい艶へ育っていく。この変化の違いが半年、一年と経つほどに立体感を増し、革とともに“自分のコンチョ”として育っていくのです。

特に黒のサドルレザーと合わせると、シルバーの明暗がいっそう際立ちます。

黒の深さに銀の光と影が乗る、あのコントラストは一度見ると忘れられない組み合わせです。


シルバー925コンチョに手彫りで唐草模様を彫っている様子

経年変化を前提にした、育つコンチョという発想

コンチョというと装飾品のように思われがちですが、実際は財布やベルトと一緒に毎日触れられる「道具」です。だからこそ、当工房では 新品の綺麗さだけでなく、経年変化したときの美しさ を常に想定して制作しています。

彫りの深さ、タガネの角度、鏡面の仕上げ具合——

どれをとっても「半年後・一年後の姿」を意識した設計です。


シルバーは、触れる部分が艶を増し、彫りの溝が深い影を帯び、鏡面に細かな表情が生まれていく素材。

革製品と同じく「育つ素材」なので、使うほどに味わいが積み重なります。

オーダーいただいた方の革財布が育つ過程と、コンチョの変化が同時に進んでいく。それが“手仕事の銀”ならではの面白さであり、使う人だけが楽しめる特権です。

完成した手彫り唐草シルバーコンチョを寝かせて

全面彫り・装飾変更・財布に合わせたカスタムにも対応

今回のように部分的に彫りを入れる仕様だけでなく、鏡面部分をすべて唐草で埋めたり外周装飾の雰囲気を変えるなど、細かなカスタムにも柔軟に対応可能です。


革の色やスタイルに合わせて銀の表情を整えることで、財布全体の完成度がぐっと上がります。

「せっかくなら、この財布だけの装飾をつくりたい」そんな方には特におすすめです。

一点ずつ手で彫り、磨き、仕立てるからこそできるカスタム。

世界にひとつだけのコンチョを、ぜひあなたの革製品にも。


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完成した手彫り唐草シルバーコンチョを黒革の財布につけている




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