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サドルレザーの黒を手縫いで仕立てた上質な財布

  • AZZWELL
  • 11月16日
  • 読了時間: 4分

革の表情を見極めながら仕立てる

今回仕立てたのは、黒のサドルレザーを使った手縫い財布です。

ぱっと見はシンプルですが、手に取ると革の存在感と、使いやすさを両立した構造になっています。

サドルレザーは、厚みとコシを兼ね備えたとても丈夫な素材。

ナチュラルカラーの印象が強い革ですが黒になると一気に表情が引き締まり、クラシックで上品な印象に変わります。


裁断では、革の繊維の流れやわずかなシワを見ながら、どの部分をどこに使うかを慎重に判断します。

一枚の中でも部位ごとに密度や質感が違うため、どこを表に出すかで仕上がりが大きく変わる。

最初のこの工程で完成度の半分は決まる、と言っても過言ではありません。


緻密な裁断とコバ磨きが決め手

裁断が終わったら裏面を整えて革粉が出ないよう下処理をし、パーツごとに「コバ」と呼ばれる革の断面を磨いていきます。黒のサドルレザーは磨くほどに深い艶が出て、まるで金属のような光沢を帯びていきます。

断面を整え、染料を重ね、なめらかな手触りになるまで何度も磨く。

この段階での精度が、完成後の耐久性にも直結します。見た目の美しさと同時に、日常で長く使える強度を確保するための大切な工程です。


一針ずつ縫い上げる手縫いの時間

縫製はすべて手縫い。

ミシンでは再現できない、微妙なテンションの調整や糸の馴染みを感じながら進めていきます。

このテンションの調整がただきつくし締めれば良いというわけではなく締めすぎずゆるすぎず...

とても言いづらく表現しづらい感覚なので割と難しかったりします。


今回使用した糸はフランス製の高級麻糸「Fil Au Chinois(フィル・オ・シノワ)」。

しっかりと撚りがかかり、艶のある糸が黒革の表情をより引き立てます。

ピッチはやや広めに設定し、サドルレザーの厚みとのバランスをとることで力強い印象に。

手縫いの作業は時間がかかりますが、針を通すたびに革と糸がひとつになっていくような感覚があり、無心で集中できる心地よさがあります。

均一な縫い目を保ちながらも、ほんの少しの手の温度が残る──

それが手縫いならではの魅力です。


黒いサドルレザー財布を手縫している


手縫いサドルレザー 黒財布の静かな存在感

こちらの財布には、シルバーコンチョで留めるコードデザインを採用しています。

この財布でまず目を引くのは、やっぱり黒のサドルレザーと顔となるシルバーコンチョの組み合わせ。

落ち着いた黒に、少し冷たく光るシルバーが映えて、全体がぐっと引き締まります。


サドルレザーは使い始めこそマットな印象ですが、使い込むほどに深い艶が出てきて、コンチョの輝きとのコントラストがどんどん美しくなっていきます。革の表情と金属の輝きが少しずつ変化していく、その過程も楽しみのひとつです。

派手さはないけれど、手に取ったときに感じる存在感があります。

使うほどに増していく艶、指先に伝わる革の質感、そしてシルバーの重み。どれもが静かに主張してくる、そんな大人の組み合わせです。


※今回の財布に使ったシルバーコンチョの制作については、文末の関連記事で紹介しています。


黒いサドルレザー財布を組み立てている途中

末長く寄り添うための一品

黒という色が持つ落ち着きと、手縫いならではのぬくもり。

その両方を日常の中で感じていただけるよう、細部まで丁寧に仕立てています。

また当工房の製品は「長く使い続けられる道具」という視点も大切にしています。

財布として成り立つようにデザインしていますが、役目を終えたあとも “財布の形に縛られない” 使い方ができるようにも考えています。

カードケースとして、アクセサリーケースとして、名刺入れとして、小物入れとして──

革が育った後も用途を変えながらずっと手元に置いておける、そんなマルチユースのケースとして成り立つように設計しています。


一点ずつ革の状態を見極めながら仕立てるからこそ生まれる、唯一無二の個性。

同じ黒でも育ち方はそれぞれで、一つとして同じ艶には育ちません。

長く付き合うほどに味が深まり、使い方によって表情も変わっていく──

そんな黒のサドルレザーならではの魅力を、ぜひあなたの生活のどこかに馴染ませていただければと思います。特別な日の贈り物にも、日常にそっと寄り添う相棒としてもおすすめです。


<関連リンク>


同じサドルレザーを使った生成りの手縫い薄型財布の記事もどうぞ。


👉 写真使用コンチョについての記事


黒いコンチョ付きサドルレザー財布を机の上に置いて斜め左から見た

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